Products DNA −ものづくりの系譜−

日本のオーディオ文化をPCテクノロジーとの融合で守る。その心意気から、「DELA」は生まれた。

私たちの出発点は、
オーディオメーカーなんです。

── この度、メルコグループ創業40周年記念モデルとして、ハイレゾ対応デジタルミュージック・ライブラリー「DELA N1Z “MELCO 40th Anniversary Limited Edition”」が発売されました。まずは「DELA」とはいったいどのような商品群なのか教えてください。

「DELA」とは「デジタルオーディオの未来」を表すフランス語「Au-dela de l'audio numerique」から取った名称です。いままではオーディオの世界にはいらなかったが、これからのデジタルオーディオの世界に必要な製品群という思いを込めたブランド名です。
2007年あたりからピュアオーディオの世界に「ネットワークオーディオ」が紹介されました。つまり、CDやレコードの代わりに「NAS(ハードディスクやSSD)やPCに貯めたファイル」を音源として再生するという新しい音楽の楽しみ方です。PCの技術を利用することで利便性と音質の両面でCD再生の限界を超えるとあって、ハイエンドユーザーは色めき立ちました。ですが、それまでまったくの別世界であったピュアオーディオとコンピュータの世界は、そう簡単に混じり合うことはできなかったんです。
第一に、音楽データを整理・保管しておくNASの使用法が、ピュアオーディオファンのリスニングスタイルに合いませんでした。例えばオーディオでは音楽を聴く際に電源を入れ、聞き終われば電源を落としますよね。その感覚でNASの電源はオン/オフできません。電源が入るのにも切れるのにも長い時間がかかりますし、無理に早く切ったりすると壊れてしまうこともあります。また、オーディオ機器と違って、つなぐだけでは動きません。設定や、アプリのインストールもつきものです。どれだけ便利でも、使いこなすところまで至らなければ受け入れられることはありません。オーディオ販売店でも、デジタル機器については門外漢。PCやNASを販売しているわけでもありませんから、故障や問い合わせにも対応できません。これらの機器が必須であることを嫌い、やがて敬遠し始めました。使い始めが難しく販売店も推さないとあって、日本でネットワークオーディオはいったん下火になったんです。

── では、CDやレコードをソースとするオーディオに後戻りしたということでしょうか。

はい。売りやすくて使いなれたCDプレーヤーやレコードプレーヤーは今でも人気があります。
ただ、CDに留まれば良いかというと、そうもいかない事情があります。ピュアオーディオでの利用に耐える高品質なCDドライブは、世界的にも日本のメーカーに依存していたんですが、その生産数は年々減少しているのです。そうした状況から、ヨーロッパをはじめとした海外の歴史あるオーディオメーカーは、既にデジタルデータを使うことを前提とした製品に移行しています。わずかに日本のメーカーがCD製品を作り続けていますが、それも難しくなってきています。
今後、新しい製品はデジタルデータを前提としたものにならざるを得ませんが、販売店は推薦しない。お客様もついてこない。そのままでは、行き着く先はオーディオ文化の衰退です。
それはなんとか食い止めたかった。なぜなら、私たちバッファローは今でこそ周辺機器の総合メーカーですが、出発点はオーディオメーカーなんですよ。だからこそできることはあるんじゃないか、と考えました。
NASやネットワーク機器をはじめ、周辺機器に関するノウハウはもちろん、オーディオに関する知見もある。デジタルデータがオーディオの中心に来るのであれば、バッファローがその新しい文化を牽引しようと考えたのです。

── どのようなアプローチで開発に臨んだのですか。

DELAに至る前に、まずは試金石として「LS421D」という商品を発売しました。これは見た目こそ一般的なNASと変わりませんが、オーディオ利用向けとして設定済みとし、説明書もオーディオ機器との接続を前提にした、限りなくシンプルなものにしました。ピュアオーディオファンの方々が細かな設定に煩わされることなく、パッケージを開けてすぐに使えるような商品としたんです。また、PCM方式のデータだけでなく、それまでのNASでは配信できなかったDSD方式のデータにも対応。そしてこれもチャレンジングな試みでしたが、「LS421D」は家電量販店等のパソコン周辺機器コーナーに「置かなかった」んです。販売チャネルはオーディオ売場・オーディオ販売店のみとしました。
商品の性格上、大量生産とはいきませんから、必然的に価格は一般的なNASよりも高額になってしまいましたが、結果として私たちの考え方は間違っていなかったと。ピュアオーディオファンの方々、そして販売店から「ようやくこういう商品が来たか!」と受け止めていただいたんです。「LS421D」が受け入れられる土壌があるのなら、外観も格調高くより高音質、いわばピュアオーディオファンの美意識により適った商品を送り出すことができると確信をしました。

「DELA」の開発は、
「ピュアオーディオの文法」に
則って行われた。

── そうして「DELA N1シリーズ」の商品化が決まったわけですね。

はい。N1シリーズが目指したのは、オーディオラックに収めて満足感のある美しい外観、ピュアオーディオファンにとって使い勝手の良い操作性、そしてなにより、音質を左右する信号の高い出力品質。この3点です。

── 外見的にもとてもNASには見えないですね。

われわれはミュージックライブラリーと呼んでいます。
オーディオ展示会で良く見る光景が、NASを利用したネットワークオーディオを紹介しているにも関わらず、NAS自体はオーディオラックの裏側に隠されている、というものです。オーディオ輸入代理店からも、プラスチックのNASなんて見栄えが悪くて置きたくないと言われたことがあります(笑)。ですが、純然たる事実として音楽データがどこから出ているかといえば、プラスチックで見栄えはよくないかもしれませんがそのNASやPCからなんです。そこで、ソースの保存に相応しい、高級感があり所有欲も満たせる、ピュアオーディオにふさわしい外観を持たせることで、オーディオラックに並べて置かれても恥ずかしくないものが必要と考えたんです。

── 使い勝手の部分はいかがでしょうか。

まず、一般的なNAS との大きな違いは、起動時間がわずか17秒だということ。「音楽を聴きたい」と思って電源を入れても何十秒と待たされるようでは、ピュアオーディオのスタイルに合致しているとはいえません。さらにこれは一目瞭然なのですが、自発光型の有機ELディスプレイがついていることも大きな違いです。PCを使用することなく、ディスクの初期化でもネットワークの設定変更でも「DELA」だけで全てが完結します。ネットワーク上に余計なパケットが流れることを嫌い、NASナビゲーターのような「PCやスマホからNASを見つけるだけのアプリ」も使わないようにしています。また、これはソフトウェアの部分なのですが、メディアサーバーと呼ばれる楽曲管理ソフトにもこだわっています。メディアサーバーとは、格納されている楽曲のデータをデータベース化して、曲名やアーティスト名、アルバム名といったようにさまざまな切り口で読み出せるようにするもの。これまではドイツの企業から購入したソフトをそのまま搭載していたのですが、お客様に使い勝手をヒアリングすると、よく使う項目が上位にこないし、「全曲」という切り口だと数万曲のデータが単純にアルファベット順に並ぶだけで、非常に使いにくいという声が聞き取れました。そこで、N1シリーズではオーディオファンの声をメディアサーバーの改善に反映するとともに、曲選びのためのツリーをすべてバッファローで作り直しているんです。常に曲はトラック番号順で並ぶのはもちろん、インデックスで頭の文字だけ選ぶと絞り込みができたり、聴き比べをしたいお客様のためにDSFやWAVといったファイル形式でも選択できる。ハードウェアはもちろん、ソフトウェアの部分でも「ピュアオーディオの文法」に則った工夫が施されているんですよ。

40周年記念モデルは、
トランスポートとしての
品質を極限まで追求。

── 今回新しく開発されたスペシャルモデル「DELA N1Z “MELCO 40th Anniversary Limited Edition」は従来機とどのような違いがあるのでしょうか。

まずは出力品質の向上にさらにこだわりました。出力品質を低下させる大きな要因のひとつであるノイズ。これを徹底的に排除するために、2つある電源ユニットにさらなる向上策を施しています。また、SSDの動作をよりよくするための追加基盤を搭載し、振動を極限まで低減させるため、インシュレーターを従来機で使用している樽材の中に鋳鉄をはめ込んだタイプから、フル鋳鉄で体積的にも大型のものに変更しています。そして面構えの部分でのもっとも大きな特徴は、ディスプレイが専用色のブルーであることと、我々バッファローの原点である「MELCO」の名が冠されていることですね。

── お客様の反応はいかがですか?

40周年記念ということで、限定40台のスペシャルモデルを製造しました。その内、国内向けは20台ですが、おかげさまで非常に好評です。なにぶん数が少なく手に入れられなかったお客様には申し訳ないのですが、今回培ったノウハウは今後の製品に生かしていきたいと考えていますので、期待して待っていただきたいと思っています。

コラム(こぼれ話)

オーディオ専門店での「NAS聴き比べ」でLS421Dのプロトタイプは一番人気がなかったのだそう。製品版では改善されたため好評を博することが出来たが、この時目の当たりにした経験が、困難を乗り越え N1 シリーズを商品化する原動力になったという。

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