IoT住宅の実証実験に「AirStation connect」によるメッシュネットワークを導入。安定したネット環境により電波の通りにくい宅内でも50以上のIoT機器を運用可能に

ミサワホーム総合研究所 様

ミサワホーム総合研究所 スマートホーム研究PJ
リーダーの飯島雅人氏(左 以下、飯島氏)と、
ミサワホーム総合研究所 スマートホーム研究PJ
守谷一希氏(右 以下、守谷氏)

ミサワホーム総合研究所は、経済産業省と進めている「IoT 社会実現に向けた住宅設備機器連携における機能安全に関する国際標準化」において、ミサワホームの渋谷展示場に50以上のIoT機器を配置した実証実験を進めています。そのIoT機器をつなぐWi-Fiネットワーク機器として、メッシュネットワーク対応Wi-Fi「AirStation connect」を採用。3階建ての住宅に、Wi-Fiルーター(無線LAN親機)「WTR-M2133HP」1台と専用中継機「WEM-1266」4台を導入しました。ここで得られた機能安全やリスクに関する知見は、国際標準化だけでなく将来のIoT住宅設計にも活用される見込みです。

概要

経済産業省のスマートホーム国際標準化にミサワホーム総合研究所が協力

渋谷の住宅展示場の3階建て住宅に50種類のIoT機器を設置

IoTを活用したスマートホームの国際規格策定に向けて動く経済産業省

最近、IoT(Internet of Things)技術の進化に伴い、この技術を活用した「スマートホーム」に注目が集まっています。しかし実際に住居にIoTを導入していくにあたっては、個々の機器が安全に動作するものであっても、複数の機器が同時に使われる状況では想定外の不具合が生じる可能性がありました。

経済産業省は、スマートホームにまつわるリスク低減を目的として、国立研究開発法人 産業技術総合研究所とミサワホーム総合研究所が共同で行う「IoT 社会実現に向けた住宅設備連携における機能安全に関する国際標準化」を支援しており、国際電気標準会議(IEC)に提案。国際標準規格の制定を目指しています。

渋谷展示場の3階建て住宅がIoT実証実験の舞台に

ミサワホーム渋谷展示場

この国際標準化に向けた実証実験の舞台となっているのが、東京都渋谷区の総合住宅展示場「TBS ハウジング渋谷 東京ホームズコレクション」内にあるミサワホームの渋谷展示場です。4年前に建てられたこのモデル「CENTURY 蔵のある家」を利用して、2017年4月に実験を開始。2017年には、ミサワホームの創立50周年を記念して、およそ50種類のIoT機器を導入しました。

1階に設置されたモビール。冷蔵庫の開閉を検出して回り始める

来場者は、ここで将来のスマートホームの姿をみることができるでしょう。例えば、住宅1階のドアには人感センサーを設置。来場者が足を踏み入れるとコミュニケーションロボットが出迎えます。冷蔵庫の開閉を検知して静かに回り始めるオブジェ(モビール)は、さりげない見守りの役目も果たしています。2階の壁面に埋め込まれたスマートスイッチから照明を操作し、スマートスピーカーからカーテンやロボット掃除機を動かせます。3階の子ども部屋にもアプリで操作可能な自走式のプロジェクターなどが設置されています。

ミサワホーム渋谷展示場

大収納空間「蔵」を特徴とした、ミサワホームの3階建て二世帯住宅「CENTURY 蔵のある家」を展示。経済産業省からの委託を受けた「IoT社会実現に向けた住宅設備連携における機能安全に関する国際標準化」の実証実験の場として、2017年10月のミサワホーム創立50周年にあわせて50以上のIoT機器を設置。スマートスピーカーやスマート照明、コミュニケーションロボット、スマートロックなどを活用したスマートホーム体験を提供しながら、住宅におけるIoT機器稼働時の安全性を検証している。

所在地

東京都渋谷区神宮前5-53-7 渋谷展示場

電話

目標・課題

スマートホーム普及に向けた機能安全の確認とルール作りが目的

1階から3階に点在するIoT機器をつなぐネットワーク構築が課題

スマートホームの普及には設計上のルール作りが必要

スマートホームの国際標準化に向けた実証実験において、ミサワホーム総合研究所の役割は、機能安全規格作成に必要な具体的な事例を収集することだといいます。「世の中で広く使われている多くの機器を入れて実験することに意味があると思っています。実際に住宅内にIoTを張り巡らせたときの課題も見えてきました。」(飯島氏)。

実際、渋谷展示場には、ミサワホームが提供するIoTを活用したライフサービス「LinkGates」のホームゲートウェイをはじめ、20社以上のメーカーによる、スマートスピーカー、コミュニケーションロボット、人感センサー、スマート照明、スマートロックなど54種類ものIoT機器が設置されています。

その目的は住宅の機能安全規格を作ることだけではなく、スマートホームの普及を見据えた現実的な設計上・運用上のルール作りにあるといいます。「万が一、IoTを導入して問題が起きたときのことを考えると、IoTサービスを提供する企業が、お客様との共通認識が得られる適切なルールに基づいて開発が行われる環境が整わないと普及は望めません。」と飯島氏は見ています。

電波が通りにくいという盲点も。ルーターの置き場所に苦心

50以上のIoT機器を接続するネットワークが求められていた

そこで課題となったのが、これら多数のIoT機器をつなぐネットワーク環境をどうやって構築するかという点でした。当初、ミサワホーム総合研究所は、モバイル回線を利用した据え置き型のルーターを用いていました。しかし、この住宅は複数の階をまたがって電波が通りづらいという事情もあり、各階にモバイルルーターを設置してクラウド経由でそれらをつなぐなど、試行錯誤したそうです。「実証実験の開始当初は、あちこちにWi-Fiルーターが置かれていました。」と飯島氏は振り返ります。

ミサワホームの住宅は頑丈な作りが評価されています。また、木造の建物で比較的電波は通りやすそうと考えていたのですが、設備などの状況によって予想よりも電波が通りにくい場所があることを再認識したそうです。例えば、床暖房では床全体に金属のパネルを敷き詰めるため、電波が妨害されるのです。こうした制限を避け、電波が最も通りやすい場所を見つけたとしても、適当な設置場所がなかったり、電源コンセントがなかったりと、Wi-Fiルーターを置ける場所が限られていることも課題だったそうです。

解決策

親機と中継機が相互に通信して最適経路でつながるメッシュネットワーク

電波の強さやネットワーク接続を可視化できる専用アプリが評価ポイント

導入商品

「AirStation connect」
トライバンドルーター(親機)

「AirStation connect」
専用中継機

従来型の中継機より効率的なメッシュネットワークに注目

一般に、新しい住宅には情報コンセントと称して有線LANが各部屋に敷設されるのですが、使い勝手の良さから有線LANは使わずにWi-Fiを主に利用されるお客様が多くなってきました。一方で、建物の大面積化や複層階化などによってWi-Fiがつながりにくいケースが増えつつあるそうです。その中でミサワホーム総合研究所が着目した新技術が、親機と中継機同士が互いに通信しあうことで、編目(メッシュ)状にネットワークを構築する「メッシュネットワーク」でした。

そこで渋谷展示場の住宅にメッシュネットワークに対応したWi-Fiルーターの導入を検討していたところ、独自のメッシュ機能を搭載した「AirStation connect」の開発を進めていたバッファローから提案を受け、導入に至ったといいます。

まずはメッシュ親機の「WTR-M2133HP」を、有線のインターネット回線を引き込んだ1階に設置し、通信状況を確認して、2階、3階には合計4機の専用中継機「WEM-1266」を設置しました。

ルーターの置き場所は専用アプリで確認

バッファロー以外にも複数のメーカーを検討していたというミサワホーム総合研究所ですが、実際に導入した印象として、守谷氏はアプリの使いやすさを評価しました。例えば、中継機をどこに置くかを決める際には、iOSとAndroid用に提供されている専用アプリを用いて、電波の強さを確認しながら設置できたそうです。

また、「AirStation connect」の独自メッシュ機能には、最も効率良くつながる経路を自動的に選択する機能があります。専用アプリには親機と中継機がどのような構成でつながっているか一覧表示できる機能があり、通常は目に見えない無線のネットワークを可視化してくれることも、守谷氏は評価しました。

有線機器を無線化する「イーサネットコンバーター」機能も活用しました。3階の寝室に中継機「WEM-1266」を設置し、背面に用意された有線LAN端子を利用することで、IoT機器制御用のPCを接続できました。

1階に設置された親機「WTR-M2133HP」

3階の子ども部屋に設置された専用中継機「WEM-1266」

ミサワホーム渋谷展示場「CENTURY 蔵のある家」のネットワーク構成図

効果

「カバー」する必要がない、インテリアに馴染むデザイン

電波の通りやすい住宅の設計に実証実験の知見を活用

一見してWi-Fiルーターと分からないデザインが好評

こうしてミサワホーム総合研究所は50種類以上のIoT機器のうちWi-Fi接続の機器と、それらのコントローラーとして使用するiPadを、「AirStation connect」で構築したWi-Fiに接続し、実証実験を進めています。コミュニケーションロボットやスマートスピーカーを駆使した近未来のスマートホーム体験は、来場者からも好評を得ているそうです。

最新技術のWi-Fiが張り巡らされている一方、それらがインテリアに馴染んでいることも評価されています。これまでのWi-FiルーターはいかにもIT機器といった外観のものが多く、布製や木製のカバーをかけるなど、隠して利用している家庭も多いといいます。しかし電波を扱うルーター商品として、こうした利用形態は理想的な環境とは言えません。

これに対して「AirStation connect」は、一見するとそこにルーターがあるとは気づかないほど生活空間に溶け込んでいます。「Wi-Fiルーターには見えないデザインがいいですね。」と守谷氏は言います。

「AirStation connect」は『暮らしとなじむ』をテーマに、共通したトーンのスタイリングを採用している。

実証実験で得られた知見を住宅設計に活用

今後の展望として、ミサワホーム総合研究所では、ルーターを住宅内に埋め込み、もっと目立たなくすることも検討しているといいます。しかし、天井に設置するとボタン操作ができず、壁の中に入れるとメンテナンスが難しいなど、課題も多いのが現状です。こうした点も考慮しながら、守谷氏は快適なスマートホームの実現に向けた最適解を模索していくそうです。

飯島氏は、今回のIoT実証実験を通じて、住宅と電波についての知見を得られたと語ります。「住宅を設計する上で水道やガス、電気は最初から考慮していますが、ネットワークはお客様が独自に導入されるのが一般的で住宅の設計として十分に考慮されていませんでした。今回の実証実験から、電波が通りやすい設計やコンセントが必要な場所が見えてきたので、今後の住宅設計はインターネットを使うことを前提に、こうした知見を活用していきたいです。」(飯島氏)。

【左】住宅では、コミュニケーションロボットやIoT表示ディスプレイが出迎えてくれる
【右】「ネットを前提とした住宅設計について知見を得られた」と語る飯島氏(左)


取材後記

最新のIoT機器を50個も配置した住宅といえば、機器やケーブルがごちゃごちゃしているのを想像してしまいがちです。しかし渋谷展示場の住宅内にそうした雑然さはなく、いたって普通で、意識しなければIoTが使われていることに気づかないほどでした。二世帯が落ち着いて暮らせるミサワホームの住宅の雰囲気はそのままに、IoT機器が住人を見守る様は、日々の生活をさりげなく便利なものにしてくれるスマートホームの姿を予感させるものになっています。


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