療法士育成にタブレットを活用するためのWi-Fi環境を構築。学校間、部門間の情報共有をリアルタイムで行える環境づくりを推進
学校法人 福岡保健学院 様
学校法人 福岡保健学院(以下、福岡保健学院)では、3D人体解剖学アプリなどの活用で学習の質を高めることを目指し、平成31年4月から小倉リハビリテーション学院の学生全員にiPadを提供することを決定。その運用に最適なWi-Fi環境の構築に、バッファローの無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」を採用しました。同時に、福岡和白リハビリテーション学院にも同設備を導入。今後は運営する7校すべてに導入し、学校間、部門間の情報共有などに活用。授業への活用のみならず学校運営全体のICT強化を計画しています。
概要
九州・山口地区を中心に7つの医療系専門学校と助産院を運営
時代を先取りした学校運営の一環としてタブレットを導入
高いリハビリテーション技術と人間力を持った療法士を育成
福岡保健学院は、九州・山口地区を中心に、5つのリハビリテーション専門学校、2つの看護専門学校を運営する学校法人。全国規模で医療を展開するカマチグループの一員として、作業療法士、理学療法士、看護師、助産師を育成しています。医療法人を母体としている特性を活かし、グループの系列病院と連携しながら、現場に即した授業や研修、実習を実施し、専門的な知識、技術、態度を身に付ける教育を行っています。平成22年に開設した「みずまき助産院 ひだまりの家」では、地域社会に根付いた出産・子育ての場として、次世代を担う子供の健やかな発達をサポートしています。
「小倉リハビリテーション学院」は、福岡保健学院が平成16年に初めて開校したリハビリテーション専門学校3校のうちの1校。理学療法学科(昼間コース定員80名・夜間コース定員40名)、作業療法学科(定員40名)があり、基礎分野・専門基礎分野・専門分野・実習の4分野のカリキュラムを実施。高い国家試験合格率と、開校以来100%の就職率を誇っています。リハビリテーションの技術はもとより、人として、また社会人・組織人として、高い“人間力”を持った療法士の育成に取り組んでいます。
他の専門学校に先駆けて、いち早くタブレット導入を計画
カマチグループは常に、国の政策を10年先取りして動くことを目指し、最新の医療の提供を目指してきました。その精神は福岡保健学院の運営方針にも反映されていると藤井氏は語ります。「当学院では、常に最新の設備を整え、医療現場からフィードバックされた知識や技術をもとに、教育を行うよう努めています。今回のタブレット導入もそうした取り組みの一環です。国が教育のICT化を推進し、小中学校でタブレットの活用が進められる中、専門学校ではまだまだICT化が進んでおらず、多くの学校で昔ながらの講義形式の授業が行われています。当学院では、こうした状況をふまえ、講義形式から主体的な学習への転換を目指すべくいち早くタブレットの導入を計画。3D人体解剖学アプリや国家試験対策ソフトの導入なども視野に、タブレットを活用できるWi-Fi環境を整えることにしました。」(藤井氏)
学校法人 福岡保健学院
昭和49年、当時不毛であった救急医療に取り組むために「下関カマチ医院(現・下関リハビリテーション病院)」を開院。以来、カマチグループとして、九州・山口地区、関東地区に24の急性期病院、回復期病院を開院し、地域社会に貢献する医療を推進してきた。平成2年に学校法人 福岡保健学院を創設し、福岡看護専門学校を開校。平成16年に小倉リハビリテーション学院、下関リハビリテーション学院(現・下関看護リハビリテーション学校)、八千代リハビリテーション学院を開校。その後、福岡和白リハビリテーション学院、福岡看護専門学校水巻校(現・福岡水巻看護助産学校)、下関リハビリテーション学院(現・下関看護リハビリテーション学校)を開校し、現在、7つの医療系専門学校を運営している。教育理念は「人間愛・自己実現」。平成22年には、学校法人による初の助産院、みずまき助産院ひだまりの家を開院し、出産・子育ての支援にも注力している。
目標・課題
ICTシステム構築プロジェクトによるWi-Fi導入・ICT強化計画
学校業務全般における情報共有のためのシステム構築
福岡保健学院では、学校間、部門間での情報共有のリアルタイム化によるノウハウの共有などを目的として、平成29年にICTシステム構築プロジェクトを設立。学校運営のICT強化も視野に入れたWi-Fi導入計画を進めました。「プロジェクトでは、授業のICT化に限らず、学生募集、広報活動、学生個人情報管理など、業務全般における情報共有のためのシステム構築を検討しています。その第1段階として、授業へのタブレット活用を主目的としたWi-Fi環境の構築を検討しました。」(藤井氏)
「学生用タブレットの導入にあたっては、セルラーモデルの導入も検討してみたのですが、契約台数が多くなるため、毎月多額の通信費がかかることがわかりました。在籍数は小倉校だけでも1学年約120名、全3学年合計は約360名。1人につき1台配布となると約360台分の回線契約が必要で、大手キャリア3社のいずれの見積もりも採用できる価格ではありませんでした。そのため、ブロードバンド回線1契約で運用できるWi-Fiモデルを採用し、校舎の全フロアで快適に通信できるWi-Fi環境を整備することにしました。」
解決策
商品選びのポイントは多台数同時接続と航空レーダー対策
ハイパワーPoEスイッチの採用で設置台数を最小限に
導入商品
航空レーダーによるDFS障害を回避
販売店として本件を担当したのは、旭陽電気株式会社の山田氏。山田氏は、無線LANアクセスポイント、PoEスイッチにバッファロー商品を選びました。「教室では1クラス40名、講堂では100名ほどがタブレットを同時に使用されるということでしたので、トライバンドと公平通信制御で多台数同時接続に強い『WAPM-2133TR』をお勧めしました。また、本校と同時に福岡和白リハビリテーション学院でもWi-Fiを導入したのですが、福岡和白の校舎は福岡空港から約12kmと近く、さらに隣接している福岡和白病院には救急搬送用のヘリポートもあるため、航空レーダーによるDFS(Dynamic Frequency Selection=動的周波数選択)障害が懸念されました。本商品は、『DFS障害回避機能』を搭載していますので、その点でも安心して提案できました。」(山田氏)
「WAPM-2133TR」には、DFSによる無線LAN停止を回避するため、レーダー監視専用のアンテナが搭載されています。これを使用して干渉しない周波数を常に監視・把握し、レーダー波を検知した際に瞬時に干渉しない周波数へと自動で切り替える仕組みが「DFS障害回避機能」です。
DFSとは
「Dynamic Frequency Selection(動的周波数選択)」の略。5GHz周波数帯の「W53」、「W56」で気象・航空レーダーなどの干渉があった場合、アクセスポイント側が干渉のないチャンネルに退避する仕組み。法律で義務付けられ、無線LANアクセスポイントに必ず搭載されている。干渉した場合、無線LANを60秒間停波して移動予定のチャンネルがレーダー波と干渉しないかを監視する必要がある。
8台の「WAPM-2133TR」への給電が可能なハイパワーPoEスイッチを採用
小倉リハビリテーション学院では、4階建ての校舎の各フロアに3~8台の「WAPM-2133TR」を設置。給電用のPoEスイッチには、ハイパワータイプの「BS-GS2016P/HP」を採用することで、スイッチの台数を最小限に抑えることができたと言います。「トライバンド仕様の『WAPM-2133TR』は、使用するバンド数が多い上に多機能なため、最大消費電力が25.5Wと比較的高めです。『BS-GS2016P/HP』は、各ポート最大30W、合計384Wの給電が可能で、今回の導入計画に最適でした。スイッチの台数を1フロアに1台、計4台に抑えることができましたので、施工・管理がしやすく、機器収納ボックスにすっきりと収めることができました。」(山田氏)
効果
3D人体解剖アプリを授業に活用
新入生全員にiPad ProとApple Pencilをプレゼント
ICT強化による学校運営への効果にも期待
アプリや撮影機能の活用で、受け身の授業から学生主体の授業に
小倉リハビリテーション学院では、平成30年7月にWi-Fi導入工事を完了。次年度の運用開始に向けて、タブレットを活用した授業の準備を進めています。「来年度から、3D人体解剖学アプリを授業に活用する予定です。生きた人間の動きや形態を忠実に再現した3次元の人体模型を使い、自分で操作しながら学習することで、講義形式の授業と比べて、格段に理解がしやすくなります。実技の授業では、タブレットの撮影機能を活用し、自分の技術レベルを客観的に確認できるようになります。これまで受け身だった授業が学生主体に変わることで、学生のモチベーションが上がり、学習意欲も高まると期待しています。」(藤井氏)
系列7校へのWi-Fi導入により、学校運営のICT強化を推進
小倉リハビリテーション学院では、授業で使うタブレットとして導入するiPad ProとApple Pencilを、平成31年度の入学者全員に進呈することにしました。「教材費として徴収することもできるのですが、あえてプレゼントという形にすることで、学校の魅力を高め、入学の動機付けにしようと考えました。オープンキャンパスや説明会でも、『iPadがもらえるんですね!』と、受験生の嬉しそうな様子を目にすることが多く、手応えを感じています。」(藤井氏)
ICTシステム構築プロジェクトでは、今回のWi-Fi導入を、学生のためだけではなく、学校業務全般に活かしていきたいと考えています。「Wi-Fiを活用することで、学校間、部門間の情報共有をリアルタイムに行えるようになります。また会議にタブレットを使うことで、書類のペーパーレス化も可能です。今後は当学院が運営する7校すべてにWi-Fiを導入し、学校運営全体のICT強化を進めていきたいと想います。」(藤井氏)
取材後記
意外と知られていませんが、無線LANアクセスポイントは、航空レーダーなどの干渉を受けると、5GHz(W53・W56)の使用チャンネルを切り替えなくてはなりません。その際に切り替え先チャンネルがレーダー波と干渉しないか監視するため、60秒間Wi-Fi通信が途絶えてしまいます。これを解消するのが「WAPM-2133TR」に搭載されているDFS障害回避機能です。Wi-Fi導入の際には、空港や港、気象台だけでなく、病院のヘリポートにも注意が必要だということを、今回の取材で再認識しました。導入計画の際には念のため、航空写真地図などで近隣のヘリポートの有無も確認しておくと良いと思います。