108台のアクセスポイントを導入し、 タブレットを有効活用した教育を推進 ICTによるアクティブラーニングの加速を目指す
函館工業高等専門学校 様
北海道函館市にキャンパスを構える函館工業高等専門学校(以下、函館高専)。函館高専では、以前よりICTを活用した教育を進めてきましたが、学生がより能動的な学習を行える環境を実現するために、約200台のiPad miniと共に、教室や大中講義室をカバーするWi-Fi環境を構築しました。今回は、教育機関におけるICT活用の最前線と、タブレットとWi-Fiの有用性について紹介します。
概要
創造力と実行力を持った実践的技術者の育成を推進
ICTを活用した教育にも注力
タブレット活用に際し、Wi-Fiによる高速ネットワークが必須に
5年制/7年制の一貫教育を行い、多くの実践的技術者を世に輩出
1962年、北海道函館市に設立された函館高専は、「汝が夢を持て 大志を抱け 力強かれ」を校訓に掲げ、本科5年間、または2年間の専攻科を加えた、7年間の一貫した教育プログラムのもと、技術立国日本を支える「創造力と実行力を持った実践的技術者」の育成を進めています。
現在では、「生産システム工学科」(機械コース、電気電子コース、情報コース)、「物質環境工学科」、「社会基盤工学科」の3学科と、学士課程となる専攻科が設置されており、約1,000名の学生が在籍しています。卒業生は官公庁・大手優良企業・地場企業など、実社会から高く評価されており、高い就職率を維持しています。また、全国の大学の、主として工学部系学部の3年に編入学する道も大きく開かれています。
ICTを利用した専門教育を推進するため、学内ネットワーク環境を構築
函館高専では、ICTを活用した教育にも注力しています。そのための基盤として、学内にギガビットイーサネットによるネットワーク環境を構築。すべての部屋に設置された情報コンセントにより、学内の教育用サーバーやインターネットに対してPCからアクセスすることを可能としています。また、校内の各演習室や図書館には200台以上のPCが設置されており、プログラム演習やCAD演習、情報処理演習といった専門演習のほか、学術研究、さらには語学演習等で日々、活用されています。
一方、CADアプリケーションをはじめ、語学教育のためのe-Learning環境、さらには学習管理システム(LMS)など、ソフトウェア面での環境整備も進められています。
授業でのタブレット活用を目指して、Wi-Fi環境の導入に着手
ICTを用いた教育をさらに推し進めていくにあたり、函館高専が次の一手として掲げたのが、タブレットを用いた教育環境の整備です。函館高専では学生への貸し出し用として、約200台のiPad miniを導入すると共に、教室や講義室、さらには学生寮などで活用できるようにするため、Wi-Fiによるネットワークアクセス環境を構築しました。その基盤として選択されたのが、NTT東日本が提案したバッファローのWi-Fi商品です。
独立行政法人 国立高等専門学校機構 函館工業高等専門学校
1962年の高等専門学校第一期校として、北海道函館市に設立。道南地域唯一の総合的な技術系高等教育機関として、創造力と実行力を持った実践的技術者の育成を目指している。現在では、本科(5年制・準学士課程)3学科と専攻科(2年制・学士課程)が設置されており、1,000人を越える学生が在籍している。
目標・課題
アクティブラーニングの実践を目指し、iPad miniを導入
スムーズなネットワーク接続を実現するWi-Fi環境が必須に
セキュリティーや運用管理性の確保も重視
アクティブラーニングの実践には、タブレットが有効
近年、教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学生が能動的に学習することで汎用的能力の育成を図る「アクティブラーニング」への期待が高まっています。
「アクティブラーニングの実践に際してICTの活用は有効策の1つであり、そのためには、演習室だけでなく一般の教室でもICTを使える環境が不可欠であると考えていました。そうした要件に対応するデバイスとして、場所を気にせずに利用できるタブレットが最適だったのです」と、小林先生はiPad mini導入に至った理由を説明します。
「また、近年ではタブレットでも利用可能なe- LearningシステムやLMSが数多く登場しており、それらを用いることで教育方法の幅を広げられることや、学生たちが物心ついたときから慣れ親しんできたスマートデバイスを教育環境に取り入れることで、自らが積極的に学ぶ姿勢を身につけられる、と考えたこともiPad miniを導入した大きな理由でした」(小林先生)
200名規模の大講義室でもストレスのないWi-Fiアクセスが必須
そうしたタブレットを用いた教育を行っていくために不可欠だったのが、Wi-Fiによる高速かつ柔軟なネットワークアクセス環境です。その実現に向け、函館高専は具体的な仕様策定を開始。一般の教室では40人の学生が、大講義室では200人の学生が一斉にWi-Fiを経由したアクセスを行うことを想定し、ストレスなくスムーズに通信できることを必須要件として掲げました。
小林先生は、「通信に際してタイムラグなどが発生してしまうと、アクセス自体が面倒になり、使われないサービスになってしまいます」と説明します。無論、スムーズな通信が実現されなければ、授業にも支障をきたすことになりかねません。
セキュリティーの確保と運用を容易にする管理ソフトウェアも不可欠
また、Wi-Fi環境の導入にあたって掲げられたもう1つの要件が、セキュリティーと運用管理性の確保です。小林先生は、「既存の学内ネットワークには厳格なセキュリティーポリシーが定められています。一方で、授業等でのiPad miniの使用に際しては、セキュリティーを確保しつつも、セキュリティーポリシーの制約によって利便性が損なわれないようにしなければなりません。そうしたことから、新規にWi-Fi用のネットワークを敷設することを決定しました」と話します。
さらに運用管理の面でも、トラブルが発生した際の迅速な対処や、容易な設定、展開が行えるよう、ネットワーク集中管理システムの導入が必須とされました。
解決策
法人様向け無線アクセスポイント「WAPS-AG300H」を採用
PoEスイッチの採用で設置工事の負荷やコストも抑制
「BN-ADT」の導入により、運用管理も容易に
導入商品
提案には、性能と価格のバランスに優れたバッファロー商品を選択
先に掲げた要件を実現するため、函館高専は本格的なWi-Fi環境の構築に向けて、2013年2月、ベンダー各社に入札を募ります。その結果、最終的に選択されたのが、NTT東日本が提案したバッファローのWi-Fi商品でした。
提案を担当したNTT東日本からは、「提案側としても複数の商品を検討しましたが、限られた予算の中で函館高専様が掲げる要件を満たすには、コストパフォーマンスと性能のバランスに優れるバッファローのWi-Fi商品が最適でした。加えて、管理の容易性も評価ポイントとなりました」と説明します。このほか、既に函館高専の一部の研究室や学生寮でバッファローのWi-Fi商品が導入されており、通信の高速性、稼働の安定性が評価されていたことも、提案時に採用した理由だったといいます。
なお、2013年度は新入生が利用する15教室、および学生寮を対象に導入が行われましたが、続く、高学年の10教室、および大講義室、会議室を対象とした2014年度のネットワーク拡張の競争入札においても、バッファローのWi-Fi商品が選択されました。
各教室、講義室に設置されたWAPS-AG300H。導入は2~3月の春休み期間に行われたが、事前のネットワークサーベイやスケジュール調整が奏功し、無事、新年度からのカットオーバーを迎えられた
新規Wi-Fiネットワークの構築にPoE対応スイッチが貢献
今回のプロジェクトでは最終的に、108台の「WAPS-AG300H」が導入されました。一般教室には3台、大講義室などでは10台のWi-Fiアクセスポイントが設置され、1台あたり15~20人程度の学生をカバーしています。また、iPad miniとWi-Fiアクセスポイント間の通信速度は最大300Mbps(規格値)の高速通信が可能であることと、無線端末の接続台数制限により、無線帯域の負荷分散を行うロードバランス機能の活用で、快適な通信が実現されています。
さらに、各Wi-Fiアクセスポイントを集約するスイッチとして、PoE給電に対応したGigaスイッチ「BSL-PS-G2108M/ G2116M」、および「BS-GS2008P」も導入されました。現在、18台のBSL-PS-G2108M、2台のBSL-PS-G2116M、そして13台のBS-GS2008Pが校内に設置されており、ギガビットに対応した高速通信により、Wi-Fiの性能を最大限に発揮させるネットワーク環境が構築されています。また、先述した新規Wi-Fi用ネットワークの構築に際しても、PoE給電への対応が電源周りの工事をはじめとした設置費用の抑制に大きく貢献しました。
運用管理の負荷を抑制する管理ソフトウェア「BN-ADT」
セキュリティーと運用面でも工夫が凝らされました。はじめにセキュリティーについては、新規Wi-Fiネットワークを構築し教務用/教育用ネットワークを物理的に分けているほか、共用部分も存在することからVLANを設定し、切り分けを行っています。さらに不正な端末の接続防止用にセキュリティーソフトウェアも導入。MACアドレスフィルタリングを実施することで、事前に申請されていない端末による無線アクセスを遮断するような仕組みが整えられています。
一方、障害発生時の迅速な対処や設定管理を容易にするため、ネットワーク集中管理ソフトウェア「BN-ADT」も導入されました。「授業によっては、1教室あたりのWi-Fi接続端末数を増やさなければならないこともありますが、BN-ADTはそうした設定変更をコンソール側から簡単に行えるので、都度、現地に向かわずとも済み、とても重宝しています」と、小林先生は評価します。
効果
安定したWi-Fiネットワーク環境が最先端の教育をサポート
ICT教育の推進で、学生の学習意欲も向上
校務のペーパーレス化にも貢献
最先端のICT教育を支える高速かつ安定したWi-Fi環境
現在では、小林先生が担当する無機化学、材料工学、無機材料工学のほか、情報系科目、英語などでiPad miniを用いた授業が行われていますが、「教員、学生ともに、Wi-Fi環境に対してストレスを感じることは全くなく、安定かつ高速なネットワーク環境を享受できています」と、評価します。
具体的には、双方向学習支援システムを用いた授業のほか、サーバーにアップされた教材や問題のダウンロード、授業後のアンケート提出、そしてインターネットを利用した調べものなどでタブレットとWi-Fiネットワークが活用されています。 一方、学生寮では一斉学習の時間が設けられていますが、学生寮に設置されたWi-Fiアクセスポイントを介して、LMS上にある教育コンテンツや教材にiPad miniでアクセスすることが可能となっており、多くの学生寮生が利用しているといいます。
授業に対する学生の積極性や意欲も向上
タブレットとWi-Fi環境の導入は、学力向上につながり始めているようです。小林先生は、「本格的な運用を開始してからまだ1年程度しか経過していないため、数値による具体的な評価を下すことはできませんが、少なくとも学生の学力が底上げされ、試験の点数で、下位層と上位層の幅が狭くなっているようです」と話します。
「また、ICTの活用により、従来のような一方向での教育から、双方向的な授業へと形式が変わったことで、授業に対する学生の意欲や積極性も変わっているように感じられます。学生どうしで学び合う気運も育まれつつあり、総合的に判断して、十分な教育上の効果を上げていると考えています」(小林先生)
校務のペーパーレス化にも貢献したWi-Fiとタブレット
一方、校務の効率化にもタブレットとWi-Fiが貢献しています。その一例がペーパーレス化の実現です。「教員会議の資料を教務用サーバーからダウンロードしてiPad miniで参照したり、Wi-Fiを経由してサーバーへアクセスし会議資料をアップデートしたりするなど、ペーパーレス化や利便性の向上につながっています」と、小林先生は説明します。
最後に小林先生は今回のプロジェクトを振り返り、次のように評価するとともに、今後の展望を語りました。 「快適なWi-Fi環境が実現されたことで、ICTを用いた授業がスムーズに行えており、NTT東日本とバッファローには『良いネットワークを構築してくれた』と評価しています。今後も、タブレットの増設や、学内Wi-Fi環境の拡大も視野に入れつつ、ICTを活用した教育をさらに進めていきたいと考えています」
取材後記
函館高専では入学を希望する中学生や保護者向けに学校説明・見学会を行っていますが、「専門的な知識を学ぶ高専であれば、タブレットを使った教育も当たり前ですよね」「学生寮でもiPadを使って勉強できるのですね」という声が数多く寄せられたそうです。このエピソードからも、ICTを活用した教育に対する学生や保護者の期待の大きさが伺えます。そうした教育環境を実現していくためにも、タブレットとWi-Fi環境の導入が欠かせないものとなっていくでしょう。