グローバル・リーダーの育成を目指し、アクティブラーニング教室を新設。高速で安定したWi-Fi環境を整備して円滑なタブレット授業を実現

学校法人九里学園高等学校 様

九里学園高校 教頭 井澤治氏(左 以下、井澤教頭)、ネットワーク等担当 事務 木村淳一郎氏(右 以下、木村氏)

学校法人九里学園高等学校(以下、九里学園高校)では、ICTを活用した先進的なアクティブラーニングの実現を目指し、新設したアクティブラーニング教室に2台の無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」を導入。それまで有線LANでデスクトップPCを使って実施していたICT授業を40台のタブレットPCに切り替え、無線LANで教室内で自由にネットワークを使える環境を整えました。図書館や教育センターホールなどにも無線LANアクセスポイントを設置し、教室内に限定されないICT活用にも積極的に取り組んでいます。

取材協力

株式会社データシステム米沢

概要

山形県初のSGHアソシエイト校

アクティブラーニングのより良い実践を目指し、タブレットPCでも安定した通信環境を実現

国際教育に力を入れるスーパーグローバルハイスクール・アソシエイト校

1935年に建てられた美しい木造校舎を今も守り続ける九里学園高校

1935年に建てられた美しい木造校舎を今も守り続ける九里学園高校

九里学園高校は1901年に「九里裁縫女学校」としてスタートした、山形県内でもっとも古い私立高等学校です。国の文化財にも指定される木造の美しい校舎は1935年に建設されたもの。1999年からは男子生徒を受け入れ、「九里学園高等学校」と名前を変えて共学校になりました。国際教育にはそれ以前から力を入れており、三十数年前から海外の姉妹校と締結。最近でも留学生の受け入れや海外研修、海外からの訪日団との交流などを積極的に行い、自治体からのホームステイ先の受け入れ要請などにも応えられる体制を整えています。近年は、文部科学省が平成26年度から開始した新事業「スーパーグローバルハイスクール(以下、SGH)」(※)のアソシエイト校として山形県内で初の指定を受けました。

アクティブラーニング教室のアップグレードにともないWi-Fi環境の強化が必要に

九里学園高校ではSGHアソシエイト校として、「生徒が自らさまざまなことをリサーチして問題点を探り、解決法を考え、プレゼンテーションする」形で課題研究を行う「アクティブラーニング」を実践できる環境を目指し、校内のアクティブラーニング教室をアップグレードする計画を持っていました。アクティブラーニングのツールとして全国的に使い始められているタブレットPCを導入し、同時に多台数同時接続でも安定した通信が可能な無線LANを設置するものです。生徒1人ひとりがタブレットを使い、インターネットを利用した学習を実践することができる環境を模索しました。

スーパーグローバルハイスクール:「高等学校等におけるグローバル・リーダー育成に資する教育を通して、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図る」ことを目的とした文科省が進める事業。同事業を踏まえグローバル・リーダー育成に資する教育の開発・実践に取り組む高等学校などがアソシエイト校として指定される。

学校法人九里学園高等学校

学校法人九里学園高等学校

1901年に、九里とみ氏によって九里裁縫女学校として設立された、山形県でもっとも古い私立高等学校。1948年には米沢女子高等学校となり、1999年に男女共学になると同時に現在の九里学園高等学校と改名。教育理念は「人と共に生き、人のために生きる。」伝統のある学校でありながら早くからグローバルな視点を持ち、国際交流に力を入れる。スポーツ強豪校としても有名。

所在地

〒992-0039 山形県米沢市門東町1丁目1-72

電話

目標・課題

より良い教育環境を作るためにアクティブラーニング教室を新設

デスクトップPC+有線LANからタブレットPC+無線LANへ

40台のタブレットPC同時接続でも安定した無線LAN環境が必要

ICTを活用したより良いアクティブラーニングを実践するために

九里学園高校では、1999年から校内の全室に有線LANを導入し、情報処理科目や商業科目のツールとして早い時期からICTを活用してきました。さらにより良い教育環境を作るために新設されたアクティブラーニング教室では、SGHアソシエイト校として生徒同士がグループワークを通して発見、調査、問題解決をする学習法を実践しています。また特に調査やプレゼンテーションといった行程においては、各生徒が、インターネットの活用や、プレゼンテーション用ソフトを使いこなすことが欠かせません。そのため、同校では、生徒1人が1台のタブレットを使用した授業の実現を模索していたのです。

デスクトップPCからタブレットPCへ。多台数同時接続の通信に不安

「アクティブラーニングを実施する学校は、すでにタブレットPCを活用し始めているという話を聞いていた」という井澤教頭。タブレットPCの導入を検討するなかで九里学園高校が考えていたのは、「できるだけたくさん同時につないでもスムーズで支障がないような通信環境」だったといいます。ネットワーク関連を担当する木村氏は「将来的に、タブレットPC を100台くらい、さらにそれ以上にまで増やすとなったときに、通信は大丈夫なのかと不安を抱えていた」とのことで、「できるだけ低予算で、より良いICT活用環境が構築できないか」と、情報システムの構築・運用・管理などを支援する株式会社データシステム米沢(以下データシステム米沢)に相談しました。

データシステム米沢は、2020年の大学入試改革にも対応できるよう、ICTを活用したアクティブラーニング教室の構築を支援しています。今回、データシステム米沢は木村氏の相談内容から、アクティブラーニング実現のために電子黒板と1人1台のタブレットPC環境、また導入した機器の活用のためにすべてのタブレットPCが常に充分な通信品質が得られるより良い無線LAN環境を提案しました。

タブレットPC40台の同時通信でも安定した無線LAN環境を

結果、アクティブラーニング教室には40台のタブレットPCが導入され、同時にタブレットPCがネットワーク接続するための無線LANアクセスポイントを設置することになりました。ポイントは多台数が同時に接続しても安定したネットワーク利用ができ、接続している機器の通信速度に偏りが出ないようにすることでした。一般的なWi-Fiルーターでは、40台など多台数で1度にインターネットを使うような環境では、通信が不安定になる、十分な通信速度が得られないといった問題が発生し、授業に支障が出ることがあるのです。

解決策

トライバンドで円滑な授業を実現する「WAPM-2133TR」

既存機器も流用。コストを抑えて理想的な通信環境を構築

導入商品

エアステーションプロ インテリジェントモデル
11ac/n/a&11n/g/b 866+866+400Mbps
法人様向け無線LANアクセスポイント

2系統同時通信のトライバンドで円滑な授業を実現する「WAPM-2133TR」

データシステム米沢では、もっとも使用頻度が高くなるアクティブラーニング教室にバッファローの無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」を設置し、それ以外の使用頻度の低い部屋には規模に応じた安価なアクセスポイントを選定することを提案しました。「WAPM-2133TR」はバッファローの最新機種で、円滑な授業進行を実現するためのさまざまな仕組みを持っています。

1つ目は5GHz帯で2系統、2.4GHz帯で1系統の合計3つの帯域で同時通信が可能な「トライバンド」をサポートしている点。接続した端末を適切な帯域に分散させることで、混雑時にも快適な通信環境を実現します。2つ目はWi-Fi以外の機器から出るノイズを検知し自動で干渉しないチャンネルへ変更する「干渉波回避機能」。九里学園高校では電波障害はあまり起こらないとのことでしたが、外部の電波によって通信が阻害されるような場合にも授業を止めない効果を発揮します。さらに、レーダー波の干渉があった場合にチャンネルを瞬時に切り替える「DFS障害回避機能」も備えています。もう1つのポイントは、各端末が動画などを同時に再生しているときでも再生の遅延や端末ごとの偏りが生じにくい「公平通信制御機能」です。「WAPM-2133TR」はアクティブラーニング教室に2台設置されました。

移動可能なパーテーションで区切った2つの部屋の電子黒板近くにそれぞれ「WAPM-2133TR」を設置
移動可能なパーテーションで区切った2つの部屋の電子黒板近くにそれぞれ「WAPM-2133TR」を設置

移動可能なパーテーションで区切った2つの部屋の電子黒板近くにそれぞれ「WAPM-2133TR」を設置

既存無線LAN機器は校内の通信エリア拡大に流用

アクティブラーニング教室以外の場所でも、図書館や教育センターホール、教員室に無線LANアクセスポイントを設置しました。これらの場所ではアクティブラーニング教室に比べると同時接続数が少ないことが想定されたため、これまで利用していた無線LANアクセスポイント「WAPM-1166D」を流用。これによって、導入経費を抑えて、校舎内で同じ環境でネットワーク利用できるようになりました。例えば、図書室で例年生徒によって行われる蔵書点検では、タブレットPCと無線LANを使って効率的な作業ができたとのことです。

図書室にはこれまで使っていたものを流用してコストを削減

図書室にはこれまで使っていたものを流用してコストを削減

九里学園高校のネットワーク構成図

九里学園高校のネットワーク構成図

効果

1人1台のタブレット授業で滞りない通信が実現

海外の複数地点と結んだビデオカンファレンスに挑戦

将来はよりICT環境を拡充していく予定も

余裕のある帯域利用で、安定したタブレット授業を実現

アクティブラーニング教室を使っての授業では多台数のタブレットPCを接続しても問題なく使用可能に

アクティブラーニング教室を使っての授業では
多台数のタブレットPCを接続しても問題なく使用可能に

「WAPM-2133TR」の導入によって、スムーズなICT授業が可能になりました。40台のタブレットPCは遅延することなくネットワークを利用した授業に活用されています。授業では、先生が用意した教材やプリントを共有フォルダーに格納し、それを生徒がネットワーク経由で受け取って課題に取り組みます。完成したものは各生徒の共有フォルダーに保存するという形で提出され、先生がそれを確認します。発表内容は電子黒板を使って表示されます。与えられた課題に関してインターネットを使って調べた内容をプレゼンテーションソフトにまとめるといった授業も行われています。

海外や複数の地点とビデオを使ったやりとりも可能に

Zoomを使って多国間をつないだテレビ会議「ハイブリッドワールド・カフェ」でも遅延は起きません

Zoomを使って多国間をつないだテレビ会議
「ハイブリッドワールド・カフェ」でも遅延は起きません

また、複数の拠点をネットワーク接続してテレビ会議を行う「ハイブリッド・ワールドカフェ」という試みにも挑戦しています。九里学園の生徒が、仙台の大学、台湾の学校と接続し、さらに海外からの留学生も交えて多国間をネットワークでつなぎます。最新のビデオカンファレンスシステム「Zoom」を利用していますが、高校生がZoomを使ってこのような取り組みをするのは世界初。インターネットを使って各地との活発なやりとりが行われたとのことです。

将来はもっと拡張していく予定も

九里学園高校では、今後、無線LANアクセスポイントやタブレットPCの拡充を行うことも検討しているそうです。「当初は英語科での活用をイメージしてタブレットPCを導入しましたが、国語、理科、保健体育などほかの教科でも自発的に活用されるようになってきていて、導入した事務方としては嬉しい限り」と木村氏。井澤教頭も「ここ数年採用した新しい教員の方が積極的に活用してくれています」と語ります。授業数が増えてくるとアクティブラーニング教室だけでは対応できなくなってくることが予想されたため、すでに多目的教室にも無線LANアクセスポイントを導入したとのこと。こちらにもゆくゆくは電子黒板を設置して、本格的なアクティブラーニングに対応できるようにしていく方針だそうです。

アクティブラーニング教室では、タブレットPCの数を今の倍の80台にする予定で、将来的には生徒1人ひとりにタブレットを持たせられるような環境を考えているとのこと。さらに、生徒たちが持ち込むスマートフォンなどのデバイスを実際の授業に活用できないか検討しているとのことで、まだまだより良い教育環境への試行錯誤は続きそうです。


取材後記

英語教育とSGHのためにと考えて整備されたICTソリューションは、他の教科でも自発的に活用され、嬉しい相乗効果を生んでいるようです。まだ導入されたばかりですが、それだけに新しいアイデアがまだまだあるとのことで、これからも積極的に使われていくことでしょう。長い歴史を持った九里学園高校が、若い教員の力と最新の環境で最先端を目指していく姿を目の当たりにして、大きな可能性を感じました。


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