市内小中学校全7校へ屋内・屋外問わず校内全域で利用可能な無線LAN環境を構築。実技教科や部活動へのICT活用が可能に

秋田県にかほ市教育委員会 様

秋田県にかほ市教育委員会 教育総務課 教育総務班 班長 副主幹の
相馬央氏(左)と、 学校教育課 学校教育班 班長 副主幹の菊地昌宏氏(右)

秋田県にかほ市では、教育のICT化としてタブレット活用を進めていくにあたり、小中学校全7校の校内全域に無線LAN環境を導入。バッファローの文教向け無線LANアクセスポイントの採用により授業において複数人が同時にタブレットで接続しても、動画が途切れずに再生できる高速かつ安定した無線LAN環境を実現しました。この無線LAN環境およびタブレットは、現在、パソコン教室やグループ授業に加えて、体育などの実技教科や部活動への活用も期待されています。さらに、ロボットコンテストの全国大会出場に向けた取り組みなどにも活用されており、今後はプログラミング授業への活用のほか新たな取り組みの実施も検討しています。

取材協力

東光コンピュータ・サービス株式会社

概要

人と文化を育む教育体制の充実にも注力している秋田県にかほ市

教育のICT化としてタブレット活用を進める上で、必要不可欠な無線LAN環境の導入を検討

山と海に抱かれた風光明媚な秋田県にかほ市

雄大な自然が広がる秋田県にかほ市

秋田県の南西部に位置するにかほ市は、2005年10月1日に仁賀保町、金浦町、象潟町の三町が合併して誕生しました。南に鳥海山、西に日本海を臨む、山と海に抱かれた風光明媚な土地として知られています。また、秋田県内では春の訪れがもっとも早い温暖な地域で、降雪量が少ないのも特徴のひとつです。

そんなにかほ市は、「夢あるまち・豊かなまち・元気なまち・住みたいまち」を基本理念として、人と文化を育む教育体制の充実にも注力しています。にかほ市教育委員会を中心に、「知・徳・体の調和のとれた子どもの育成」「多様な学習機会の提供」「みんなが楽しめるスポーツの振興」「伝統文化の保存・継承」などが行われてきました。

タブレット活用を進める上で、無線LAN環境が必要不可欠

無線LAN導入の導入対象となった小中学校7校のひとつ、
にかほ市立金浦小学校

にかほ市教育委員会は、近年特に、教育現場におけるICT活用に注力してきました。2017年7月に公表された「にかほ市教育大綱」の主要施策にも、「ICTを活用した分かりやすい授業を行いながら、児童生徒の学習意欲と情報活用能力の向上を図る」「ICT環境の計画的な整備と教員のICT活用技術の向上を図る」といった内容が盛り込まれています。その一環として取り組んだのが、にかほ市内にある小中学校7校の校内全域に対する無線LANの導入でした。

秋田県にかほ市教育委員会 学校教育課 学校教育班 班長 副主幹の菊地昌宏氏は、その背景を次のように語ります。
「急激に加速する現在の情報化社会に対応してくためには、幼少期からタブレットなどにより多く触れる機会と、それを使いこなせる知識などが求められます。しかし、教育のICT化としてタブレット活用を進めていく上では、それを支えるインフラとして無線LANの存在が必要不可欠と言えます。今後はタブレットを使って、リアルタイム通信や大容量の動画コンテンツを用いた授業などの増加が予想されることから、そのニーズを満たすには、高速かつ安定性の高い無線LAN環境が必須と考えたのです。また、将来的なより幅広い用途への活用を考慮して、特定の教室だけでなく校内全域をカバーすることも極めて重要だと感じました。」

秋田県にかほ市教育委員会

山と海に抱かれた風光明媚な土地として知られているにかほ市は、「夢あるまち・豊かなまち・元気なまち・住みたいまち」を基本理念として、人と文化を育む教育体制の充実にも注力。にかほ市教育委員会を中心に、知・徳・体の調和のとれた子どもの育成、多様な学習機会の提供、みんなが楽しめるスポーツの振興、伝統文化の保存・継承などが行われている。特に近年では、児童生徒の学習意欲と情報活用能力の向上を目的として、教育におけるICT活用を積極的に推進。環境整備と教員の活用技術向上にも注力している。

所在地(学校教育課)

〒018-0311 秋田県にかほ市金浦字南金浦49-2

電話

目標・課題

延期していた無線LAN導入計画が、教育に対する新市長の情熱などで再始動

動画が途切れずに再生できる、高速かつ安定した無線LAN環境の構築が目標

現場の下見を繰り返し、各学校に最適な導入計画を作成

無線LAN導入計画が再始動

「教育に対する新市長の情熱などがあり、
無線LAN導入計画が再開できた」と語る菊地氏

こうして、にかほ市教育委員会では2016年度に、市内小中学校7校の校内全域に無線LANを導入する構想に着手。各種機器のリース期間が満了を迎えるタイミングと重なるよう、2017年9月に導入を予定していました。しかし、同年に小学校の統廃合が行われた関係から、計画は延期となってしまったのです。

この無線LAN導入計画が再始動したのは、2018年5月のこと。菊地氏は当時の様子について、「一度延期となった無線LAN導入計画の再始動には2017年11月に就任した市川雄次市長の存在が極めて重要だったと言えます。市川市長は教育分野への取り組みに熱心で、大きな原動力になりました。」と語ります。

各校に最適な導入計画作成を実施

「「各学校に最適と思われる導入計画を作成した」と相馬氏」

秋田県にかほ市教育委員会 教育総務課 教育総務班 班長 副主幹の相馬央氏は「2017年当時、にかほ市内の小中学校で無線LAN環境を導入していたのは、にかほ市立金浦小学校のみでした。すでに同校では、無線LAN環境の導入に加えて約10台のタブレットをグループ学習や授業に役立てており、モデル校として十分な基盤を持っていたのです。そこで今回行われた、市内小中学校7校の校内全域に対する無線LAN環境の導入計画は、同校が持つ実績とノウハウを横展開する形で進められました。」と語ります。

無線LANの導入で最優先すべきポイントとなったのは、児童のタブレットで一斉に動画を再生しても途切れずに再生できる、高速かつ安定して通信できる環境でした。そこでまずは、基盤となるインターネット回線を従来の公衆網から専用線へと変更。これにより、公衆網と比べて通信の混雑の影響を受けづらく、なおかつセキュアに通信できるようになります。

続いて重要になったのが、無線LAN環境に必要な機器と設置場所の見極めでした。校内全域をカバーする環境を整備するにあたり、タブレット活用に支障が出ないようにする必要があります。各校内で通信の安定性を保ちつつ、いかに効率良く無線LANアクセスポイントを配置できるかについてネットワーク導入を担当した販売店である東光コンピュータ・サービス株式会社が電波環境調査などを実施し、検討を行いました。

相馬氏は、「タブレットを最大限に有効活用するには、一部の教室だけでなく校舎内全域、さらには体育で動画を見せるような利用方法も想定されていたため、校庭やプール、中庭などでも無線LANが使える環境が求められました。中学校にはプールがなく、その分テニスコートなどへの無線LAN整備を検討し、部活にもタブレット活用できる環境を構想しました。しかし、各校は当然ながら建築構造に違いがあり、全域をカバーするために必要な機器と設置場所も異なってきます。そこで、現場の下見を繰り返しながら、それぞれの学校に最適と思われる導入計画を作成していきました。」と語ります。

解決策

費用対効果や信頼性、安心感などからバッファロー商品を採用

地域特性を含めて、最適な性能や機能を有する商品を選定

タブレットの導入は教員側の負担を考慮して段階的に導入

導入商品

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
法人様向け
無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
法人様向け
無線LANアクセスポイント

11ac/n/a & 11n/g/b同時使用
防塵・防水耐環境性能 法人様向け
無線LANアクセスポイント

ネットワーク管理ソフトウェア

レイヤー2 Gigaスマートスイッチ

通信性能と費用対効果に加え地域特性を考慮して商品を選定

機器の選定理由について、菊地氏は次のように語ります。
「情報教育推進委員会の意見も含めて検討の結果、無線LANアクセスポイントはすべてバッファロー商品を採用しました。理由として、バッファロー商品は他社商品と比べて費用対効果が非常に高いことが挙げられます。また国内メーカーとして知名度と信頼性が高いことから、安心して導入できるのも大きなメリットです。屋内の広範囲をカバーする無線LANアクセスポイントとして『WAPM-2133TR』を選びました。この商品は、2.4GHz/5GHz(W52/W53用)/5GHz(W56用)という3つのアンテナを備えるトライバンド仕様で高速通信を実現した、ICT化が進む学校に最適な無線LANアクセスポイントです。1台の無線LANアクセスポイントで最大384台のタブレットが同時に接続できるほか、多数のタブレットで同時に動画再生しても再生の遅延が生じにくい『公平通信制御機能』も魅力と言えます。また、小規模な教室などについては、1台のアクセスポイントで最大256台のタブレットが同時に接続可能な『WAPM-1266R』も活用しました。さらに、屋外設置可能な耐環境性能無線LANアクセスポイント『WAPM-1266WDPR』は動作保証温度が-25℃~55℃、防水/防塵が『JIS-2137』で定められた『IP55規格』対応と、校庭や屋外プールへの無線LAN提供に十分な性能を有しています。加えて、当地は常に海風が吹きつけ塩害に悩まされる土地柄のため、基板へのフッ素コーティングによる耐腐食性を有しているのも欠かせないポイントでした。これなら塩害の影響を懸念することなく、安心して屋外に設置できます。」

機器選定を経て、にかほ市教育委員会は、市内にある小中学校7校の校内全域に対する無線LAN導入に向けて、2018年5月から各校での施工を開始。生徒の安全確保や授業への影響を考慮し、大規模な工事は夏休みの期間中に実施されました。

廊下に設置され、複数の教室をカバーする屋内用無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」(にかほ市立金浦小学校。以下の設置写真も同じ)

パソコン教室に設置された屋内用無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」

理科室に設置された屋内用無線LANアクセスポイント「WAPM-1266R」

校庭の一部でも無線LANが使えるよう、校舎の2階部分に設置された屋外用無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」

プールでも無線LANが使えるように設置された屋外用無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」

教員側の負担を考え、段階的にタブレットを導入

タブレットにクレードルを接続し、ノートパソコンと同じように使用

同時期に進められたタブレットの選定についてもこだわりがあったそうです。まずOSは、プログラミング教育での活用や、教員側におけるコンテンツの作りやすさなどを重視してWindowsを搭載したタブレットを選択。ハードウェアスペックについては、処理速度を考慮してCPUがインテル Core i3以上で、教材制作などにも使う教員用の端末には8GBのRAMを採用しています。さらに、さまざまなシチュエーションでの活用を想定していることから、防塵・防水設計の商品を採用しました。

ただし、タブレットは、パソコン教室用に多い学校でも約50台、グループ学習用に各校10台ずつなど、段階的な導入に留めたそうです。菊地氏は「タブレットを用いた授業には、どうしても教員側の知識や慣れが必要です。中学校では、教員が専門科目ごとに授業を担当する『教科担任制』を採用していますが、一方で小学校の場合、1人の教員が1クラスの全教科を指導する『学級担任制』が多く、教員にかなりの負担となってしまいます。そこでいきなり全校での授業に導入するのではなく、まずは第一段階として各学校のパソコン教室で使っている端末をタブレットへと変更しました。」とその理由を語ります。

なお、パソコン教室用のタブレットには専用クレードルを取り付け、ノートパソコンと同様の操作感で使えるようにしています。

秋田県にかほ市小中学校7校のネットワーク構成図

効果

市内の小中学校7校で校内全域に対する無線LAN導入が実現

パソコン教室やグループ授業のほか、ロボットコンテストなどにも積極的に挑戦

電子黒板とドローンを組み合わせた新たな試みなども実施予定

日々の授業だけでなくロボットコンテストにも挑戦

こうしてにかほ市教育委員会では、市内にある小中学校7校に、計80台の屋内用無線LANアクセスポイント「WAPM-2133TR」、計70台の屋内用無線LANアクセスポイント「WAPM-1266R」、計13台の屋外用無線LANアクセスポイント「WAPM-1266WDPR」を導入。2018年9月から、本格的な運用を開始しました。運用面では、ネットワーク管理ソフトウェア「WLS-ADT」を導入し、一括管理を行っています。

各学校では、現在、パソコン教室での授業やグループ授業でタブレットの活用が進んでいるほか、自律型ロボットによる小中高校生向けの国際的なロボットコンテスト「WRO(World Robot Olympiad)」に参加し、全国大会の出場に向けて積極的に取り組んでいる学校もあるといいます。

タブレットを用いたグループ学習の様子

ICT教育の最先端事例として新たな取り組みにも注力

菊地氏は今後について、「ICT教育を進めていく上で十分な環境が整いました。あとはこの無線LAN環境を、今後どのように活用していくかが重要です。運動場でも無線LANが使えるようになったことで、たとえば運動会の様子をドローンで撮影し、Wi-Fiネットワークを介してその映像を校内の電子黒板に映し出す、といった新たな利用法も試せるようになります。」と語ります。

文部科学省では現在、「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図る」ことが明記された新学習指導要領の実施を見据え、「平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」として、「普通教室」と「特別教室」の無線LAN化を推進しています。しかし、今回にかほ市教育委員会が同市の自主財源で行った、小中学校7校に対する無線LAN環境の導入は、特定の教室だけでなく校内全域を無線LAN化してタブレットを最大限に活用しようという構想や、市内全小中学校という導入の規模を含めて、教育のICT化の取り組みの最先端を行く事例と言えるでしょう。


取材後記

秋田県にかほ市を訪れてまず感じたのは、山と海に囲まれた自然の雄大さでした。取材当日は天候が悪く、残念ながら鳥海山を望むことができませんでしたが、それでも思わずシャッターを切りたくなる、そんな魅力があります。校舎内ですれ違った時、元気に挨拶してくれる子どもたちを見て、こうした大自然に育まれている影響も大きいのだろうと感じました。そんな子どもたちが、今回行われたタブレットと無線LAN環境の導入によって、さらに大きな成長を遂げようとしています。将来的に世界へ羽ばたく数多くの優秀な人材がきっと生まれることでしょう。


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