今や宿泊客へのWi-Fi提供は“あって当たり前”のサービス 今後の客室稼働率の向上に大きな期待

京成ホテルミラマーレ 様

京成ホテルミラマーレ 管理本部 シニアマネージャーの丁野啓 氏(以下丁野氏)

株式会社千葉京成ホテルが千葉市で運営するホテル「京成ホテルミラマーレ」。同ホテルでは、オープン時より宿泊客向けに有線LANによるインターネット接続環境を提供してきましたが、2015年7月、バッファローの「WAPM-APG600H」「FS-600DHP」を導入、全客室とロビーをカバーするWi-Fi(無線LAN)環境を構築しました。その背景には、近年のスマートフォンやタブレットの利用者増に伴い、Wi-Fiが“ホテルにとって不可欠なサービスの1つ”であると判断、その導入で宿泊客の利便性と満足度を向上させることにありました。

概要

観光、ビジネスの拠点として国内外から多くの宿泊者が来訪

東京ディズニーリゾート®の公認ホテル

宿泊者からの強い要望に応え、Wi-Fiを導入

千葉中央駅に直結、複合施設を擁する都市型ホテル

京成グループの一員である千葉京成ホテルが運営する「京成ホテルミラマーレ」は2002年9月、京成千葉中央駅に直結し、映画館やレストランなどを擁する複合施設「ミラマーレ」内にオープンしました。千葉市の中心地に位置し交通の利便性も高いことから、国内だけでなく成田空港を経由して訪れる海外からのビジネス客や観光客の拠点としても、多くの宿泊客を迎え入れています。

また、東京ディズニーリゾート®の公認ホテルの1つである「グッドネイバーホテル」として、東京ディズニーリゾート®とホテル間の無料送迎バスも用意されており、年間を通じてカップルや家族連れの利用者も多数来訪しています。

ゆとりある洗練された客室、高層階からはTOKYOベイの夜景を一望

ゆったりとしたくつろぎの空間を提供するホテルミラマーレの客室。
シングルからスイートルームまで14タイプの多彩な部屋が用意されている

地上16階建てのホテルは、9階から15階に全14種類176室の客室を用意。シングルからスイート、車椅子で快適にすごせるユニバーサルルーム、展望風呂付きの特別和室など快適さと利便性を追求した多彩な客室を用意しています。また、館内には3つのレストラン、10の宴会場もあり、高層階の客室だけでなく最上階のスカイバンケット「イル・ミラマーレ」からはTOKYOベイの美しい夜景を一望できます。

地上27mのオープンエアに建つクリスタルチャペルは、
明るい太陽光が降り注ぐ全面ガラス張りの設計で、
多くの利用者から好評を得ている

結婚式での利用も多く、地上27mのオープンエアに建つ360度ガラス張りのクリスタルチャペルに加え、同ホテルのブライダルコーディネーターが親身に対応し、要望に応じて理想の結婚式をコーディネートするオリジナルプランも評判を呼んでいます。

ホテルにとって不可欠なサービスとしてWi-Fi環境を整備

京成ホテルミラマーレでは、宿泊客の満足度と利便性向上のための設備として、オープン当初から有線LANによるインターネット接続環境を提供してきました。しかし、「これからのホテルにとってなくてはならないサービス」として導入が急務となっていたのが、スマートフォンやタブレットでもインターネットに接続できるWi-Fi環境です。その実現のために選択されたのが、大崎コンピュータエンヂニアリングより提案されたバッファローのWi-Fi商品でした。

京成ホテルミラマーレ

京成電鉄千葉中央駅に隣接する複合ビル「ミラマーレ」内にて2002年9月に誕生。イタリア語の「MIRA(眺める)」と「MARE(海)」を組み合わせた名の通り、高層階からTOKYOベイを一望できる絶好のロケーションに加え、交通の利便性から、宴会や結婚式での利用のほか、ビジネスやレジャーの拠点としても多くの宿泊客を国内外から迎え入れている

所在地

〒260-0014 千葉県千葉市中央区本千葉町15-1

電話

目標・課題

外国人宿泊客を中心にWi-Fi利用への要望が急増

Wi-Fiルーターの貸出しで一時対応するも、繁忙時には利用できない事も

トラブルや問い合わせなど、本来のホテル業務にも影響が発生

外国人宿泊客を中心に、客室でのWi-Fi利用不可へのクレームが急増

客室に設置された有線LANポート。
スマートフォンやタブレットの利用者には同ポートに
挿入して利用する小型Wi-Fiルーターを貸し出ししていた

「経済が上向いてきたことを背景に、ここ数年、宿泊者数は伸びを取り戻しつつあります。中でも外国人の団体客宿泊者は円安も追い風となって、毎年10%以上、増え続けています。そうした中で急務となっていたのが、Wi-Fiによるインターネット接続環境の整備でした」と丁野氏は説明します。

京成ホテルミラマーレでは、オープン当初から各客室に有線LANポートを設置し、宿泊者向けにインターネット接続サービスを提供していました。しかし近年、ビジネス客や観光客のスマートフォンやタブレットの利用が浸透。客室で観光情報を調べたり、SNSや動画を楽しんだりする宿泊者が増え、Wi-Fi環境の早急な整備が求められていたといいます。「特に日本の通信事業者のサービスを利用できない外国人のお客様からは『なぜWi-Fiが使えないのか』『なんとかならないのか』といった問い合わせやクレームを頻繁に頂いておりました」と丁野氏は振り返ります。

小型Wi-Fiルーターの貸し出しで対応するも、利用者の増加に追いつかず

そうした要望に応えるため、京成ホテルミラマーレでは有線LANポートに接続する小型のWi-Fiルーターを導入し、利用を希望する宿泊者に貸出しを行っていました。当初は10台だった小型のWi-Fiルーターも、最終的には30台まで増設されたのですが、それでも繁忙時にはすべて貸し切ってしまうこともあり、利用できなかった宿泊客からはクレームが上がっていました。例えばビジネス利用の宿泊客が急ぎの要件でメールなどを利用したい時でも、貸し出せなかった場合には、状況を説明して待ってもらうことが多々あったといいます。

「また、同じ団体客のグループで、あるお客様には貸し出せたのに、別のお客様には貸し出せなかったこともあり、ご不便をおかけしたことを大変申し訳なく思っておりました」と丁野氏は話します。

加えて、小型ルーターは安価なコンシューマー向けの機器であったため、耐久性も十分ではなく、何度も貸し出ししているうちに壊れてしまうこともありました。

問い合わせやトラブル対応に現場担当者が時間を割かれることも

タブレットなどスマートデバイスを利用する宿泊者へインターネット
を提供するために、Wi-Fi環境の整備が不可欠となっていた

また、接客を担当する現場のスタッフが、インターネット接続に関する問い合わせやトラブル対応などに手を煩わされることも少なくありませんでした。丁野氏は、「例えば、ビジネスのお客様が会社から貸与されたノートPCを持ち込み、客室の有線ポートに接続して利用する場合には、PC側のネットワーク設定変更が必要なケースがあります。そうした設定変更に際して説明書等も用意しておりましたが、やり方が分からないお客様に対しては、都度、現場のスタッフがサポートに当たらざるを得ませんでした」と説明します。 そうした設定変更やトラブル対応には、当初はPCに詳しい管理本部の担当者がサポートしていましたが、徐々に現場スタッフへの教育を行うことで、対応にあたってもらうようにしていたといいます。

「このように、ある程度までは現場スタッフによる運用で、問い合わせやトラブル対応をカバーしてきました。しかし、サービスの一環ではあるとはいえ、インフラのトラブル対応に現場スタッフが時間を取られるのではなく、あくまでも本来の業務である、“お客様へのおもてなし”のために時間を充てられるようにしたいと考えていたのです」(丁野氏)

解決策

法人様向けWi-Fiアクセスポイント「WAPM-APG600H」を採用

ロビーフロアの不特定多数アクセス用途には「FS-600DHP」を導入

管理ソフトウェア「WLS-ADT」でセキュリティ設定を一括変更

導入商品

エアステーション プロ
11n/a & 11n/g/b同時使用
インテリジェントモデル
無線LANアクセスポイント

フリースポット導入キット
11n/a/g/b対応
Wi-Fiアクセスポイント

Wi-Fiシステム
集中管理ソフトウェア

価格と機能の優れたバランスに加え、高可用性を評価しバッファロー商品を選択

こうした背景から、ホテルミラマーレは2014年夏より、Wi-Fi環境の導入に向けて本格的なステップを踏み出します。そこで相談を持ちかけたのが、ホテルのリニューアルオープン時に館内のネットワーク構築を担当した大崎コンピュータエンヂニアリングでした。実は2012年にも一度、同社と共に他社のWi-Fi商品の導入を検討したことがありました。しかし、必要な機能に対して機器自体の費用が高額であったため、要件を満たすネットワークを構築するには、コストが予算を超えてしまうという課題が生じていたといいます。対して、今回、同社によって再度提案され導入を決定したのが、バッファローのWi-Fi商品でした。大崎コンピュータエンヂニアリング第2営業統括部 千葉営業部 千葉営業課 課長の井原道誉氏は次のように説明します。

「バッファローのWi-Fi商品は必要な機能を十分に搭載していながらもコストパフォーマンスに優れており、限られた予算内ですべての客室フロアをカバーするWi-Fi環境を構築できること、また、これまでバッファロー商品を多くの企業に導入してきた中で、一度もトラブルが生じたことがないなど、高い可用性が実証されていたことが提案の大きな理由でした」

商品ラインナップの多彩さも選択のポイントとなりました。「今回、ロビーフロアには、宿泊客だけでなく、館内施設を利用する方のWi-Fi接続を受け入れるため、フリーWi-Fiを提供できる『FS-600DHP』も導入しました。このように、用途に応じて選べる多彩な商品ラインナップを有していることも、バッファローの評価ポイントとなりました」(井原氏)

全客室176室を42台のWi-Fiアクセスポイントでカバー

京成ホテルミラマーレの客室フロアの廊下に設置された
WAPM-APG600H。

2015年4月の導入決定を経て、本稼働に向けた導入作業が開始されました。工事に伴う客室の閉鎖や、日中でも来訪されるお客様へ今回のプロジェクトでは、42台のWAPM-APG600Hが9~15階の客室フロアに導入されました。1フロアあたり6台のWi-Fiアクセスポイントが設置されており、1台のアクセスポイントで平均4部屋をカバーするWi-Fiネットワークが実現されています。導入にあたって事前にサイトサーベイを実施、最適なWi-Fiアクセスポイント数を導き出すとともに、客室の扉が厚く堅牢であったことから、遮蔽物による通信の影響を鑑み、周波数帯はIEEE802.11n/g/bを選択、端末との通信速度は最大300Mbps(規格値)が実現されています。

一方、ロビーでのWi-Fi接続の用途としてFREESPOT対応の
FS-600DHPがフロント裏に設置されている

一方、ロビーフロアに導入されたFS-600DHPは、Wi-Fiを通じてインターネットアクセス環境を不特定多数のユーザーに提供、自由に利用できるエリアサービス「FREESPOT」に対応する商品です。不特定多数のユーザーのWi-Fiアクセスを受け入れるため、複数の周波数帯を混在して利用できること、また、セキュリティ確保のためにメール認証機能を有していることが選択の理由でした。現在では、最大300Mbps(規格値)の高速化規格IEEE802.11n/a、および先述のIEEE802.11n/g/bの混在利用を行っており、さまざまなユーザーのWi-Fi利用を可能としています。

セキュリティ設定の負荷の抑制を目指し、WLS-ADTも導入

今回のWi-Fi環境の構築にあたって、もう1つの要件として掲げられたのが、Wi-Fiアクセスポイントの集中管理の実現でした。丁野氏は、「セキュリティ確保の観点からWi-FiアクセスポイントのパスワードやSSIDを一定期間で変更する必要がありましたが、機器ごとに1台1台作業するのは台数も多く、一か所から一括して行いたいと考えていました」と話します。加えて、Wi-Fiアクセスポイントの稼働および障害管理も行い、安定運用の確保と迅速なトラブル対応に繋げていくことも要望として挙げられていました。

そうした要件に応えたのが、バッファローのWi-Fiシステム集中管理ソフトウェア「WLS-ADT」です。大崎コンピュータエンヂニアリング 第2情報通信SS統括部 基盤技術部第2課 課長代理の吉田博之氏は、「WLS-ADTは複数のWi-Fiアクセスポイントに対してパスワードやSSIDの設定や電波調整を一括で管理可能なほか、障害発生時も機器の状況をPC上に表示された画面一覧から確認できます。こうした充実した機能を搭載した管理ソフトを有していることもバッファローを提案した理由の1つです」と説明します。

ホテルミラマーレ システム構成

効果

安定したWi-Fi接続により、導入後はクレームがゼロに

Wi-Fiシステム集中管理ソフトの活用で設定変更の負荷も軽減

Wi-Fiの導入で客室稼働率の向上にも期待

安定したWi-Fi接続でクレームはゼロに、顧客満足度も向上

2015年5月に行われた導入作業もスムーズに終了、6月には管理ソフトウェアの設定等の準備期間を経て、7月からWi-Fi環境の本格運用が開始されました。丁野氏は、「Wi-Fi導入後はトラブルもなく安定した稼働を続けており、通信も快適であることから、これまで寄せられていたクレームや問い合わせは一切なくなりました」と話します。実際、アンケートなどでもリピーターの宿泊客からはWi-Fi導入に対して評価の声が多数寄せられているといいます。

このようにWi-Fi環境の整備によって顧客満足度を向上させたことに加え、「現場のスタッフがネットワークトラブルや問い合わせなどの対応に時間が取られなくなり、本来の業務である宿泊客へのサービスに時間を充てられるようになっていることも大きな効果であると考えています」と、丁野氏は評価します。

集中管理ソフトの導入でトラブルにも迅速に対応可能な体制を整備

一方、Wi-Fiの運用においても、WLS-ADTの導入によって、効率化が図られています。当初の要望通り、パスワードやSSIDも一か所から変更可能となり、現在では、フロア担当者が自ら操作し、設定変更を行っています。

また、これまではトラブルが生じてもどこに原因があるのか分からず、お客様からクレームがあっても現場のスタッフには対処しきれないこともありました。しかし、WLS-ADTの導入により、Wi-Fiアクセスポイントに障害が発生した際は、機器交換で対応すればよいなど、トラブル時の初動の判断を迅速化できるようになっています。「現状、まったくトラブルは発生していませんが、万が一、障害が発生した場合でもすぐに原因を究明、対処することが可能となり、お客様にご不便をかけることのない体制が整えられたと考えています」と丁野氏は話します。

Wi-Fiの導入による客室稼働率の向上に期待

WLS-ADTの導入により、SSIDやパスワードの一括変更が
可能となったほか、万が一の障害発生時にも迅速に
対応できる体制が構築できた

今回、客室とロビーフロアのWi-Fi環境を整備した京成ホテルミラマーレですが、今後は、その利用状況を鑑みながら、宴会場やレストランへの導入も視野に入れているといいます。丁野氏は、「宴会場への導入については、利用者が最大で数百人規模となるため、宴会や会合、会議におけるWi-Fi利用の需要を見定めながら、検討していきたいと考えています」と話します。 丁野氏は、今回のプロジェクトを振り返り、次のように大崎コンピュータエンヂニアリング、そしてバッファローを評価するとともに、今後の効果について期待を述べました。

「タイトな導入スケジュールをはじめ、私たちからの様々な要望にも的確に対応して頂きました。Wi-Fiは今や、“あって当たり前のサービス”であり、当ホテルもやっとスタートラインに立てたと考えています。運用を開始してまだ1か月程度であるため、具体的な客室稼働率への貢献度の判断はこれからですが、その向上に大きく期待しています」(丁野氏)


取材後記

ホテル内では、出張中のビジネスマンが仕事でネットを利用するだけでなく、観光客もスマートデバイスを使って観光情報を調べたり、SNSで友人に近況を報告したりする事が増えています。レジャーにおいてもネット接続デバイスの活用が浸透する中、Wi-Fiはホテルにとって宿泊客への“おもてなし”を実践するための重要なツールとなっています。


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