病院の建築中に理想の環境を設計し「つながる」ネットワークを実現

医療法人社団 鶴友会 鶴田病院 様

写真左より、放射線科 主任 小田誉之氏、総務課 係長 松村治之氏 。

内科や消化器内科、循環器科など15の診療科と内視鏡センター、人工透析センター、リハビリテーションセンター、健診センターを備え、熊本市を中心に総合医療を提供してきた鶴田病院様。2012年、新病院の建築に合わせ新しいネットワークを構築。ネットワーク機器の多くにバッファロー製品を導入されている。

取材協力

西部電気工業株式会社 企業通信事業部 第二営業部

課長代理 近藤一徳氏、岩崎正志氏

概要

熊本市で40年にわたり地域住民に総合医療サービスを提供。

新病院の建築を契機に、新しい設備の導入を推進。

病院新築に合わせ、院内ネットワークの全面刷新を決定。

熊本市で40年にわたって、地域住民の方々に総合的な医療サービスを提供

熊本県の県庁所在地であり、同県最大の都市でもある熊本市。その熊本市東区で地域医療を担う病院と介護老人保健施設などを運営されている医療法人社団 鶴友会様。同法人が運営する鶴田病院は1973(昭和48)年に開業し、以来40年にわたって幅広い医療サービスを住民の方々に提供し、地域医療に貢献してきた。そして今後の地域医療の中で目指す新たな役割を設定し、その理想を実現するための環境として新しく病院を建設することになった。

新病院の建築を契機に、新しい治療法や設備を積極的に導入

建築にあたっては、病床数は従来と同じ105床だが、急性期・亜急性期病棟50床、回復期リハビリテーション病棟35床に加え、新たに緩和ケア病棟20床を開設することにした。そして癌のリハビリテーション・緩和ケア病棟に加え、化学療法や温熱療法といった治療法の導入も進めることで、診断から治療、在宅支援までの一貫したがん治療を提供していこうというのが同院の狙いだ。新しい病院棟は介護老人保健施設に隣接し、地上6階建て、延べ床面積は約7000㎡。手術室に最新設備を導入するなど、設備面でも充実を図り、最先端の医療技術と設備を備えた、地域の中核的な総合病院をめざしている。

最新の医療サービスに見合ったICT環境の構築も

鶴田病院ではネットワークを電気・ガス・水道に並ぶ重要なインフラ、情報をヒト・モノ・金に並ぶ第4の資産と位置づけている。そして病院新築にあわせて、新時代の医療にふさわしい情報をフル活用できるネットワーク構築を計画。ネットワークに必要とされる要件をまとめ、複数の業者に提案を依頼することにした。その要件づくりで中心になったのが、放射線科主任の小田誉之氏と総務課係長の松村治之氏。お二人を中心に「鶴田病院のあるべきネットワーク環境とは何か」を議論し、要件をまとめ、業者に提示。そこからの提案を待つことになった。

医療法人社団 鶴友会 鶴田病院

「最良の医療・福祉サービスを提供する笑顔に満ちた地域の施設を目指す」を理念とし熊本市において幅広い医療サービスを提供。2012年の新病院のオープンに合わせ、医療サービスの一層の充実を図ったほか、介護老人保健施設メディエイト鶴翔苑とも連携し、地域に根ざした医療と福祉の提供に努めておられます。

所在地

〒862-0925 熊本県熊本市東区保田窪本町10-112

電話

096-382-0500(代表)

目標・課題

将来の電子カルテ導入を見据えた余裕のあるネットワークの構築。

新しい病院の建築を機とした診療系と業務系ネットワークの見直し。

セキュリティー性に優れた患者様向けインターネットサービスの新規導入。

高速化と高いセキュリティーの確保、経済性と運用容易性の両立を目標に設定。

鶴田病院様のネットワーク要望は以下の通りだった。診療系と業務系、患者様向けサービスの3構成にすることとした上で、患者様の情報を扱う診療系では、(1)業務系、患者様向けとは物理的に別ネットワーク化とする (2)1Gbps以上の高速化を実現 (3)既設のオーダリングシステムのノート端末での無線利用など。一方の業務系では、(1)インターネット接続に伴う各端末を管理できるシステム構築 (2)侵入検知・防御システム、ウイルス対策の多重防御化 (3)アクセス制限可能なファイルサーバーシステムなど。さらに、これらの要件に経済性と運用容易性も考慮する必要があった。

セキュリティー性に優れ、プライバシーを守る、新しく患者様向けインターネットサービスを計画。

また、今回の計画ではこれまでにない患者様向けインターネットサービスも検討された。「当初は時期尚早という議論もありました」とのことだが、他の医療機関では導入が進んでおり、診療系・業務系ネットワークへの侵入を不可能にして、情報漏洩やウイルス感染が防止できることを解決すべき課題として設定。マルチプルVLAN機能などにより、利用者にあわせて通信を制限することで、セキュリティー確保を行う事としました。

電子カルテ導入時にも対応できる、将来的な拡張性も踏まえた西部電気工業の提案を採用。

課題はそれだけではなかった。近い将来、電子カルテ導入も考えられた。電子カルテになれば通信のトラフィック量は膨大になるため、それに対応できるネットワークであるかどうか。いくつかの業者からの提案を検討した結果、「拡張性やコスト面など私たちの要望を柔軟に取り入れてもらい、さらに電子カルテを前提にしたシステム構成として組んでいただいた」との理由で西部電気工業を選定。既存のものを置き換えという発想ではなく、将来のICT環境を見据えた提案だったのが決め手だった。

解決策

将来の通信量増大を考慮し、冗長性をもったネットワークシステムを構築。

患者様だけでなく、当直医師が持ち込んだ端末も使える無線通信環境を整備。

建築中でも「つながる無線環境」を設計できるAirStation Admin Toolsが決め手。

導入商品

エアステーション プロ
11n対応 11a&g&b
無線LANアクセスポイント

レイヤー2 PoE対応
インテリジェント スイッチ
24ポートモデル

レイヤー2
インテリジェント Giga スイッチ
24ポートモデル

ギガビット
SFP光トランシーバー
1000BASE-SX(LCコネクター)タイプ

Giga
スイッチングHub
8ポートモデル

アクセスポイント
集中管理ソフトウェア
BUFFALO Admin Tools

将来的なトラフィック量の増大に対応するため、光ファイバーでネットワークを拡張し冗長性を実現。

電子カルテ導入による将来的なトラフィック量の増大にどう対応するか。そこで現状の通信量や通信状態で検討するのではなく、 桁違いの通信量になっても余裕をもって機能する冗長性を目標とした。最大のポイントは、サーバーと接続するフロアスイッチをギガビットSFP光トランシーバーでマルチモード光ファイバー接続へと拡張したこと。「私たちとしては正直な話、提案いただいた内容は現状では過剰機能じゃないかとも思ったのですが、将来の電子カルテの稼働を考えると必要だろうと判断しました」と小田様、松村様。

患者様だけでなく、当直医師が持ち込んだ端末も使える無線通信環境を構築。

当初は患者様向けのインターネットサービスとして無線環境の設置でしたが、そのうち当直の医師が持ち込んだパソコンやタブレットも使える環境に拡張してほしいとの要望がスタッフの間から上がってきた。そこで、セキュリティーや利用者のプライバシーも考慮し、利用者同士が通信できないようマルチプルVLAN対応無線アクセスポイント(AP)を導入。患者様用、スタッフ用等と複数タグを設定し、ネットワークを仮想的に任意のグループに分離させて運用することでセキュアな環境を実現した。

実績と信頼性に加え、競合品と比べ30~40%も安い価格、さらにAirStation Admin Toolsの存在が決定的。

ネットワークを構成する機器については「西部電気工業さんから、バッファロー製品は熊本県にある研究機関にも同様な機器構成で実績があること、同機能の他社製と比較して30~40%も安いということで奨められました」とのこと。それにより、フロアスイッチ、フロアエッジスイッチ、無線AP、PoEスイッチ、光トランシーバーはいずれもバッファロー製に。またコストダウンによるメリットとして、十分な予備機を準備でき、これにより万が一の場合のシステム復旧も迅速になった。

さらに決定的だったのがバッファロー独自のAP集中管理ソフトウェア「AirStation Admin Tools」。ネットワーク設計は新築工事と並行作業のため、実際の建物で通信テストは不可能。図面を見ながらの配置設計となるがその予測が難しい。しかしAirStation Admin Toolsで無線APの集中管理、一括設定、ログ集計機能による機器配置の最適化が可能となった。そして12台の無線APを導入しても確実に「つながる」無線環境を実現できたのである。

効果

SSIDでセキュリティーを保証したタブレットやスマホをスタッフが持込み活用。

メールチェックや掲示板情報の確認、会議室予約など日常業務の効率化に貢献。

無線通信が快適にできる環境が整った結果、新しいさまざまな取組みが可能に。

スマートデバイスで業務データへすぐにアクセス可能、スタッフの業務効率が大きく向上

3階から5階までの入院患者様用の無線LAN環境は、患者様の利用だけでなく、スタッフがSSIDでセキュリティーを保証したタブレットやスマホを持ち込んでの利用が活発だ。「自分のデスクや近くの端末にまで戻ることなく、メールのチェックや院内掲示板や行事のチェック、会議室の予約などができるため好評です。確実に日常業務の効率化に貢献していると言えます」。もちろん現時点で通信速度や使い勝手でも満足されているとのこと。そうしたこともあって、スタッフからは他のフロアでも使えるようにならないかとの声も出始めているという。

無線通信環境が整ったことで、患者様向けサービスの向上や業務の効率化のための新たな試みが可能に

こうした環境が整ったことで、患者様に対するサービスの向上やスタッフの日常業務の効率化につながるさまざまな可能性が広がっている。医療機関でもタブレットで仕事することが当たり前になってくることは確実であり、そのためのインフラがこれで整ったことになる。小田様によれば、「看護師がデジカメで撮った、患者様の皮膚や褥瘡の画像を、Eye-fiで飛ばすテストもやっているのですが、これも無線LANがあればこそ。さらにベッドサイドに置くスマートTVとか、無線プロジェクターの設置とかトライしてみたいことはいろいろあって、これらも無線通信が快適にできる環境を前提にした上で、いろいろな可能性を試していくことになるでしょう」とのことだ。


取材後記

地域医療を担う病院として、住民からの信頼も厚い鶴田病院様。同院にとって初めての取組みとなる患者様向け無線通信環境にバッファローのアクセスポイントや基盤となるネットワークにインテリジェントスイッチやPoEスイッチを採用いただきました。将来を見据えたネットワークシステム、快適な無線通信環境が整ったことで、電子カルテをはじめとする同院の意欲的な取組みが可能になっています。


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